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2016年06月17日

中国人が「京都でKAWAII」体験? 爆買い減少対策「購買型」から「体験型」へ

訪日外国人客数が大幅に増加し、昨年は、百貨店など小売業が活況に沸いた。「爆買い」と言われるなど、社会的にも大きな注目を集めた。ひとつ10万円以上もする高級炊飯器のまとめ買いや、カメラやビデオカメラ、時計などの売上が大幅に伸びたというニュースを覚えている読者も多いかもしれない。

「爆買い」などの好調の背景には政府の後押しもあり、その取り組みが一定の成果を上げたといえそうだ。当初に掲げていた年間の訪日外国人数の目標も、「2020年までに2000万人」としていたが、2015年の訪日外国人客が1900万人超と2000万人に迫ったことから、目標を「2020年までに3000万人」に引き上げたほどだ。

訪日外国人客数の増加を主に支えたのは、中国からの訪日。全体の4分の1を占めているとも言われており、影響力も大きい。背景にあるのは、中国政府による入国ビザの緩和や、ラオックスなど中国資本による中国人向けの大家電量販店の拡充だろう。

また中国語の案内やメニューを充実させたり、中国で普及しているクレジットカードの決済に対応したりする工夫も、「爆買い」を後押ししてきたのかもしれない。

「爆買い」需要が為替と規制でピークアウト?

ただ今年に入ってから、訪日外国人客の「爆買い」の様子が変わっているという。訪日外国人の購買客数は7.8%増だったのに対して、1人当たりの購買額は15.9%の大幅な減少をみせて、客単価も下降したとのことだ。

実際、日本百貨店協会が発表した2016年4月の免税品売上高は、前年同月比で9.3%の減少を示した。前年同月を下回ったのは実に39カ月ぶりのことで、179億9000万円の売上になったという。ともすれば、一人ひとりの中国人観光客の財布の紐はやや固くなっており、「爆買い」も縮小してきているかもしれないのが現状だ。

それではなぜ、爆買は縮小しているのだろうか。爆買はこのまま、終焉を迎えてしまうのだろうか。その理由はいくつかある。

一つは恐らく為替レートの変動で、円高の影響があるとみられている。ピークだった2015年の元・円の為替レートは1元=20.23円。他方で、直近の為替レートでは1元=16.80円と、20%近い円高となっている。モノの値段がすべて2割も上がってしまっては、購買力も下がらざるを得ない。

また中国政府による規制も、じわじわと首を絞めている。同政府は、約6億人に普及している中国のクレジットカード「銀聯カード」の海外での外貨引出しの上限額を、最高10万元(約190万円)までとする規制を設けた。表向きはマネーロンダリング対策だが、中国経済が減速するなか、対外貿易収支の改善を図るための措置とみられている。

また4月から、中国政府は国内に持ち込まれる物品への課税も強化された。たとえば「酒・化粧品」への課税は50%から60%、「高級腕時計」は30%から60%、「食料品」は10から15%などと、負担が増大。せっかく日本に来て、爆買いしようにも、「商品はたしかにいいけど高い、旅費も高い、しかも大金は使えない、さらに税金もかかる」となれば、爆買パワーが衰えてしまうのも、仕方ないのかもしれない。

モノの消費から「クールジャパン」発見の旅へ

爆買いパワーは減少の傾向にあるが、買い物の中身を見ると変化の兆しが見える。最近良く指摘される「モノの消費」から「コトの消費」へ、つまり「購買」から「体験」への移行だ。

最近外国人が多く訪れる観光地を見ても、傾向は明らかだ。人気の観光スポットといえば、秋葉原や銀座ではなく、やはり京都の伏見稲荷大社や、広島平和記念資料館、厳島神社など、日本ならではの観光スポットとして知られているものが上位を占めている。

ほかにも、注目を集めるのは、雪景色の中で温泉につかる猿を観察でできる地獄谷野猿公苑、約2000体もの招き猫がいるお寺として有名な豪徳寺、桜の季節には、富士山と桜、五重塔というまさに「ザ・日本」の風景を1枚の写真におさめられる新倉山浅間公園などだ。いかにも日本的な情緒を体験できるからこそ、外国人観光規約には大きな魅力と映るのだろう

一方で、ハイテクとふしぎの国ニッポンを満喫できるスポットして人気が上昇しているのが、築90年の京都の歴史ある建物中の劇場で、ジャグリング、パントマイムなどワールドクラスのショーが披露される「ギア専用劇場」。世界に「KAWAII(カワイイ)」を発信しているきゃりーぱみゅぱみゅの美術担当・増田セバスチャンプロデュースによるポップでかわいい世界観「KAWAII MONSTER CAFE」などだ。

つまり、今まで体験したことのなかった日本らしさ、クールジャパンを楽しみたい観光客が増加しているということかもしれない。だとすれば、インバウンド消費を今後も維持・発展させるためには、観光本来のあり方を、地域固有の自然や伝統文化、あるいは日本にしか存在しないハイテクや最新のポップカルチャーが織りなす観光モデルを地道に作り上げていくことが重要だろう。

一過性の爆買に頼らない、「体験」を主軸においた地道な魅力づくりと情報発信が重要度を増しているといえそうだ。(ZUU online 編集部)